世界をどう見たらいいのか? 池上彰が中学3年生に行った白熱授業を書籍化

小学館編集部

池上彰の世界の見方 15歳に語る現代世界の最前線
著 者:池上彰
出版社:小学館
ISBN13:978-4-09-388442-6


日本で暮らす私たちは、世界のことをどれだけ知っているだろうか? テレビや新聞に出てくる国が本当はどんな国なのか、日本とどんな関係にあるのか、ぼんやりとした理解に留まっている人がほとんどではないだろうか。

高校時代、時間切れ及び受験に出ないからという理由で、世界史の近現代の部分はきちんと授業で学ばなかったケースが多い。その影響で、ニュースがよく理解できない。少し前からの歴史的因果関係がわからないからだ。
 
学校の授業でカバーできない近現代史を今のニュースとつなげて解説するような本をつくりたいと思っていた。解説してもらうのは池上さん、と決めていた。わかりやすい解説で、池上さんの右に出る人はいない。

当初、原稿を書いてもらおうとお願いをしたが、相談の結果、中学生や高校生に授業をして、それをまとめるという方法をとることにした。生徒たちの直接的な反応を見たり、素朴な質問や「いい質問」を受けることで、池上さん自身にも新たな気づきがあるという。「そうか、そういう点がわからなかったんだ。では、その部分を説明するには、どういう言い方をすればいいのか」と。

中高生に向けて授業をすることにした理由は、もうひとつある。この本を企画中に、2016年から選挙権を20歳から18歳に引き下げることが決まった。選挙で、どのような投票行動をとればいいのか、基礎的な判断能力をつけるためにも、世界のことを知ってもらいたい。

池上さんの特別授業6時間を、会社から近い千代田区立九段中等教育学校にお願いし、快く引き受けていただいた。

初回は、導入編。そもそも世界をどう見たらいいのか、そんな基礎を考えようというものだ。この本では、「世界」を6つのテーマから考えることにした。「世界」一般を見るのではなく、特定のテーマで「世界」を切断してみる。その切断面から、それまでとはまったく異なる「世界」を知ってもらおうというねらいだ。

たとえば世界地図。普通に思い浮かべるのは、日本が中心の地図だろう。でも、世界の国々で発行されている世界地図は、国によってまったく違うものだ。各国の世界地図を見ることで、その国が置かれている状況や、国の方針が読み取れる。これが「地図」から見る世界。   

世界の国々で使われている「お金」もまた、それぞれ異なっている。考えてみれば「壱万円」と印刷されている1万円札は、ただの紙だ。ただの紙でなぜ買い物ができるのか、そんな疑問に答えるのが「お金」から見る世界。

世界には、いろいろな宗教が存在し、共存したり対立したりしてきた。とりわけ今、「イスラム教」が注目されている。イスラム教を理解するためには、同じ一神教のユダヤ教とキリスト教と比較することが必要だ。「一神教」のことを知ると、翻って日本の宗教はどうなっているんだろう、という疑問が湧く。神道とは? 仏教とは? 他の世界のことを知ることは、結局は自分のことを知ることにつながる。これが「宗教」から見る世界。

現代では、石油や天然ガスなどの資源獲得競争が、国際紛争の大きな要因になっている。そんな資源獲得競争に大きな変化をもたらしたのが「シェール革命」だ。アメリカで起きたシェール革命が、日本とロシアの北方領土問題にまで影響を与える。「資源」から世界を見ると、国際関係の不思議さ、面白さがわかる。

東京オリンピックを控え、日本への外国人旅行者が増えている。日本の魅力は「クールジャパン」と呼ばれ、日本のアニメ好きの外国人に驚かされることもある。「文化」から親密になったり、疎遠になったりする例を見る。

世界の情報の多くを、ネットを通じて得る時代になった。2010年から12年にかけて起きた「アラブの春」はツイッターやフェイスブックが引き起こしたと言われたが、本当にそうだろうか。きっかけになったのは間違いないが、国を変えるほどの大きなうねりをつくった背景に、アルジャジーラという言論の自由を貫くアラビア語放送があったことを池上氏は指摘する。「情報」とどう付き合えばいいのか考える必要が高まっている。

本書は、以上のような現代社会を生きる上で重要な6つのテーマから、「世界」を解説する。「池上彰の世界の見方」シリーズは本書が1冊目で、2冊目からは世界の主な国や地域を取りあげる。2冊目以降のラインナップは「アメリカ」「中国・香港・台湾」「中東」「ドイツとEU」「朝鮮半島」「ロシア」「東南アジア」。全8冊予定。