ことばの背景にあるストーリーを読み味わう!

松中健一 / 小学館出版局 辞書編集

小学館 故事成語を知る辞典
著 者:円満字二郎
出版社:小学館
ISBN13:978-4-09-504181-0


漢字や漢文に関する楽しい著書が多い円満字二郎さんが、中国の故事にもとづくことばを中心に約900語を解説した辞典です。

「史記」に出てくることば、「三国志」の英雄のことば、「論語」のことば、漢詩の名句など、取り上げたことばはさまざまですが、いずれも現在よく耳にすることばばかりです。

さらに、「コロンブスの卵」「小田原評定」など西洋や日本の故事成語も収録して、バラエティに富んだ見出し語になっています。

それぞれの項目は、意味・用例・由来・補足解説で構成されていますが、特に「由来」欄では、そのことばができたいきさつを、円満字さんがていねいに解説しています。故事に登場する人物の関係や起こったできごとをわかりやすく記述していることは本書の大きな特色です。たとえば、「奇貨居くべし」は漫画「キングダム」でもおなじみの呂不韋(りょふい)のことばですが、この項目では始皇帝の父・子楚(しそ)を利用して宰相にまでのぼりつめるも、やがて没落して自殺に追い込まれる呂不韋のエピソードが紹介されています。

また、「臥竜(がりょう)」は「三国志」の劉備が有能な人物を求めていたとき、ある賢者が「諸葛孔明は臥竜なり」といって諸葛亮を推薦した故事によることばですが、この項目で「三顧の礼」や「天下三分の計」ということばも紹介され、関連する故事成語に読み進んでいくこともできます。

円満字さんが特に注目した100項目は1ページの大項目にしていますが、「助長」「推敲」「虎の威を借る狐」「舟に刻して件を求む」「矛盾」など漢文の教科書で習ったことばから、「完璧」「逆鱗」「断腸」など意外な由来のことばまで、詳しい解説を施しました。「苦肉の策」が三国志の赤壁の戦いの作戦から出たことばだったり、「覆水盆に返らず」は、別れた妻が復縁を求めてきたときの太公望のことばだったりと、故事成語の世界は興味が尽きないのではないでしょうか。