【2023.8.11】週刊読書人note.

 小峰和子著『一陽来福』

 手紙を書くときに、「時候の挨拶」を調べたことはないだろうか。あの独特な表現は、四季を六つにわけた二十四節気に基づいている。その二十四節気をさらに三つに分けたものを七十二候と呼ぶ。

 本書は、仏画家でもある著者が館長を務める観蔵院・曼荼羅美術館の行事や思い出などを交えながら、七十二候をすべて紹介・解説する。写真や図版がふんだんに使われたその内容からは、細かな季節の変化が見せる自然の美しさを感じとることができるだろう。七十二候にちなんだ漢詩・和歌・短歌・俳句まで紹介されており、文学的なたのしみにも満ちている。まさに東洋世界の生活スタイルを味わうことのできる一書。日々の変化を知るきっかけにも、時候の挨拶に使うことにもおすすめ。(B5判・128頁・3080円・青史出版)