【2023.9.29】週刊読書人note.

 『めくるめく数学。女性数学者たちが語るうるわしき数学の物語』

 「数学」。学生の頃、この科目が苦手だった人は、その名を見るだけで拒絶反応が出るかもしれない。事実、高校時代に数学赤点常習犯だった身としては、「n個のリンゴを……」という文言だけで軽いめまいを覚えてしまう。このように、数学的なものの考え方に距離を感じる人に向けて、本書は日常に潜む数学の不思議、面白さを分かりやすく教えてくれる。

 31のトピックは、どれも気になるものばかり。たとえば「勝負服のやめどき」では、5回連続で失敗した時は、その勝負服を格下げすべしと述べられる。その理由が仮説検定という考え方で解説されるのだが、導き出された結論を見ると納得せずにはいられない。他にも、「推しのグッズをゲットする」【クーポンコレクター問題】や「素数と生存競争」【素数ゼミ】、「初志貫徹で本当に良いの?」【モンティホール問題】など、思わず夢中で読んでいた。数学と日常生活の深い繫がりを面白く感じた時点で、著者三名の術中に見事にハマっていたのだろう。(嶽村智子・大山口菜都美・酒井祐貴子著/四六判・272頁・1760円・明日香出版社)