――障害者サービスの難解な用語、新たな発見も――萬谷ひとみ / 東京都新宿区立中央図書館副館長・管理係長週刊読書人2020年10月2日号図書館情報学用語辞典第5版著 者:日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編出版社:丸善出版ISBN13:978-4-621-30534-8 本書は、図書館情報学全般の用語について収録した辞典であるが、そもそもの「図書館情報学」が何を指すのかわからないくらい、図書館には独自の用語がある。 この辞典によれば、「図書館情報学」とは、「図書館学に情報学が付け加わった研究領域……」と記載されているが、要するに図書館の制度や運営、資料、サービス、施設、その利用全般のことが書かれている辞典といえる。 筆者がこの辞典を初めて使ったのは、平成21年のことであった。なぜそう断言できるのかといえば、この年、筆者は障害者サービス担当になったからである。それまで10年ほど図書館で働いてきたが、障害者サービス担当は初めてで、ちょうどこの時、著作権法の一部を改正する法律(平成21年法律第53号)が、一部を除き平成22年1月1日から施行されることとなり、筆者が勤める図書館でも、障害者サービスを利用できる対象を「視覚障害者」から「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者」に拡大することとなった。これは、いわゆる視覚障害の方だけではなく、体が不自由で資料を持ったり、ページをめくったりできない方や、目で読んでも内容がわからない、あるいは内容を記憶できない方も視覚障害の対象となり、録音図書を借りたり、対面による朗読サービスを受けられるようにするということである。このことに伴い、図書館条例等の改正やパンフレットを作成したのだが、図書館用語そのものが独特である以上に障害者サービスの用語は特に難解のため、この辞典を使用した。 その時調べた用語の一つに「DAISY」がある。筆者が当時手にした3版(平成19年12月発行)には、「Digital Accessible Information System 活字による読書が困難な人々のための国際的なデジタル録音資料制作システム。当初は1997年のIFLA(国際図書館連盟)大会で採用された視覚障害者のための録音図書制作システムであったが、近年は音声だけでなく、画像やテキストデータとともにインターネットでも提供できるマルチメディア対応型記録媒体となっている。DAISY資料は、カセットテープに比べて、検索機能や収録時間、音質などの点できわめて利便性に富む。再生には専用プレイヤーまたは編集用ソフトウェアが必要。なお、公共図書館におけるDAISY資料の制作に際しては著作権者の許諾が必要である。」とある。 今回、本書(5版)の書評を書くにあたり、改めて初版から4版まで手に取ってみて、「言葉は生きているんだな」ということを実感した。それは、初版(平成9年9月発行)、2版(平成14年8月発行)には、この「DAISY」は辞典に掲載されておらず、4版(平成25年12月発行)では、「なお~」以降が「2009(平成21)年の「著作権法」改正により、公共図書館においても著作権者に無許諾でDAISY資料を制作できるようになった」と変更されており、5版(令和2年8月発行)ではさらに「2018(平成30)年の改正では、障害者にDAISYデータ等をメール送信等することも著作権者の権利制限の対象とされ、また一定の要件を満たす者が著作権者の許諾なしにDAISY資料等を制作できるようになった。」が追記されている。 普段、知っているつもりの用語も誰かに説明するときはもちろん、それ以外にも辞典を引いてみることはあると思うが、これを機に図書館用語を改めて調べてみると、新たな発見があるかもしれない。(よろずや・ひとみ=東京都新宿区立中央図書館副館長・管理係長)★日本図書館情報学会=一九五三年設立。図書館情報学の進歩発展に寄与することを目的とする。